ハワイの神話と伝説(第一章・その2)


『 ハワイの神話と伝説 』 目次  (タイトルをクリックすると各項へジャンプします。)
はじめに・・・(著者プロフィール・参考文献)
第一章 島々と人間の誕生
【1】 ハーロア(Haloa)
【2】 「メレ・ア・パークレイ(Mele A Paku'i)」より
【3】 四大神による創造神話
【4】 ペレ(Pele)による島々の創造
第二章 マーウイとヒナ
【1】 マーウイの誕生
【2】 マーウイ、島を釣る
【3】 マーウイ、空を持ち上げる
【4】 マーウイ、火の起こし方を知る
【5】 マーウイ、太陽を捕まえる
【6】 マーウイ、化けトカゲをやっつける

第一章 島々と人間の誕生
「メレ・ア・パークレイ」より
* メレ・ア・パークイ
……「パークイの歌」。
パークイはこのチャントの作者の名前です。
* ワーケア・カヒコ・ルアメア
……「カヒコ・ルアメア」は、ワーケアの父の名前。
* 起きたカヒキと寝たカヒキ
……一説によれば、「起きたカヒキ」とは地平線(水平線)より上の世界、「寝たカヒキ」とは地平線(水平線)より下の世界のことだといいます。「カヒキ」については解説を参照してください。
* ワリヌウのパパ
……「ワリヌウ」はパパの別名。
* カパ
……樹皮で作った布のようなもので、風合いは和紙に似ています。英語では、ほかのポリネシア語から「タパ」と言います。
* モロラニ島
……ここではモロキニ島のことのようです。モロキニ島は、マウイ島とカホオラヴェ島の間にある三日月型の小さな無人島です。現在はシュノーケルの名所として知られています。
* クー、ロノ、カーネ、カナロア
……ハヴァイイ神話で特に重要とされる四大神。この後のお話にもでてきます。
* カナロア島
……カホオラヴェ島のこと。
* ラーナイ・カウラ
……カウラとは、「カウラワヒネ」の短縮形とも取れますが、「カ・ウラ」と分割すると「赤(い)」という意味になります。そのため、「ハーロア」に出てくる同音の文句は「赤いラーナイ島」となっています。
* 葉が開く子供
……この文句は、ハヴァイイでは男児に割礼を施す習慣があったことを示しています。オアフ島はとても幼かったという意味です。
* カマヴァエルアラニモク
……カウアイ島の古い名前。「モク」(moku)は「島」の意。
* レフア島
……ニイハウ島の西にある小島。主要ハヴァイイ諸島(北西諸島を除く)の中で、最も西にあります。
* カウラ島
……ニイハウ島の南西にある小島。
MELE A PAKU'I の原文

【 解 説 】

もう一つの島生みを語るチャントです。このチャントには意味があいまいなところもありますが、大筋では、ワーケアとパパが浮気をしながらハヴァイイ諸島を作ったことが述べられています。それぞれの島の両親が誰かという点では、「ハーロア」の説よりもこのチャントで語られる説の方が有名でしょう。島ができる順序は、「ハーロア」と同様、ハヴァイイ島からニイハウ島へとなっています。


パパは、途中でカヒキへ帰ります。カヒキとは、ハヴァイイ人の先祖の故郷で、ハヴァイイ神話によく出てくるキーワードの一つです。カヒキはタヒチ(Tahiti)に通じます。というのは、ハヴァイイ語ではt音とk音の区別がないので、現在では統一してk音で表すことになっているからです。考古学的研究でも、ハヴァイイ人の先祖は、最初マルケサス諸島から、ついでソシエテ諸島(その主島がタヒチ)からやってきたことが分かっています。ソシエテ諸島とハヴァイイ諸島の間では、かつてはひんぱんに行き来があったようですが、いつしか交流は途絶え、遠洋航海術も失われてしまいました。そしてハヴァイイでは、長い年月が経つ間に、カヒキとは特定の島を指す地名ではなく、先祖達の出てきた遠くにある土地を漠然と指す言葉になりました。ですから、ハヴァイイで伝承されてきた神話・伝説に、カヒキという言葉が出てきても、それがタヒチ島(もしくはソシエテ諸島)そのものを指すのかどうか断定するには、よく検証する必要があります。


作者のパークイは、カメハメハ(Kamehameha)一世(1758?~1819)の時代の偉大な歴史家でした。パークイは、はるか大昔から続く歴史家の家系に生まれ、先祖代々語り継がれてきた話に基づいて、カメハメハ大王の血統を語るチャントを創作しました。ここでご紹介したのは、そのチャントの前半部分で、島々の誕生を語る第四十九行目までです。チャントは全体で百二十六行からなり、このあと、ハヴァイイの支配者達について年代順に語られていきます。その途中では、ワーケアと娘のホオホクカラニ、彼らの子供のハーロアといった名前にも簡単に触れられているのが興味深いところです。  ハヴァイイ人にとっては、先祖と系譜はとても大切なものでした。カメハメハのような支配者階級の人間にとっては、血統によって自らが正当な権力者であることが保証されますから、家系を記録することは当然重要なことでした。しかし、紙か何かに名前を文字で書いて遺しておくということができませんでしたから、権力者の出自はお抱えの専門家が丸暗記したのです。


また、庶民にとっても先祖は大切でした。というのは、ハヴァイイでは、先祖が子孫の守り神となって見守ってくれていると信じられていたからです。日本人にとっての氏神と同じですね。これを、 *アウマクア('aumakua)といいます。先祖がたくさんいるように、それぞれの家族には複数のアウマクアがいて、その名前を全部覚えるのは大切なことでした。そして、多くのアウマクアは、動物(鮫、トカゲ、イモムシなど)、植物、はたまた岩などの姿をとって子孫の前に姿を見せることができるとされていました。
これを、*キノ・ラウ(kino lau)と言います。アウマクアは、災難のとき助けてくれたり、あるいは災難にあう前に警告してくれたりします。例えば、ある人のアウマクアにトカゲがいれば、トカゲは水の精なので、その人は水中で溺れたりすることがないとされました。その代わり、もし自らのアウマクアをいじめると病気になり、もしアウマクアを食べてしまうと、罰として死ぬことになると考えられていました。そのため、ハヴァイイの人々は、アウマクアのキノ・ラウを子供にしっかりと教え、各家庭でアウマクアのためにいろいろな儀式を行っていました。しかし今日では、アウマクア信仰は多くの家で忘れられかけているようです。

アウマクア('aumakua)の関連語
 ● akua...神。精霊。
 ● makua...親。親と同世代の親戚(おじ、おばなど)。
 ● 'aumakua...氏神。守護神となった先祖。
キノ・ラウとは
 ● キノ(kino...体。)
 ● ラウ(lau...たくさん。)
キノ・ラウを持つのはアウマクアに限らず、神はみんないろいろなキノ・ラウでこの世に姿を現します。神やアウマクアは、たいてい一人で複数のキノ・ラウを持っています。


第一章【2】 「メレ・ア・パークレイ」より  完

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